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教材の英語は聞けるのに、ネイティブ英語が聞き取れない?|『ガチネイティブの速い英語リスニング500問』レビュー
「TOEICやIELTSのリスニングはある程度聞き取れるのに、ネイティブ同士の会話になると急に分からなくなる」
英語を勉強していると、こんな壁にぶつかることがあります。
試験や教材で使われる英語と、実際の生活の中で聞こえてくる英語には、少し違いがあります。
そこで今回は、そんなギャップを埋める練習に使いやすい『ガチネイティブの速い英語リスニング500問』を紹介します。
実際に私も一周し、生徒さんとのレッスンでも音声を使ってみました。
特に、「教材の英語」から「実際に使われている英語」へリスニング力を広げたい方におすすめしたい教材です。
「教材の英語は聞けるのに、現地では聞けない」のはなぜ?
TOEIC、IELTS、TOEFL、英検などの試験では、リスニング用に収録された音声を聞くことがほとんどです。
もちろん、試験対策としてはそれを聞き取れるようになることが大切です。
ところが実際に海外へ行くと、英語だけに集中できる環境ばかりではありません。
外を歩いていれば風が吹いています。
道路では車が走っています。
周りでは別の人が話しています。
さらに、相手が自分のために一語ずつ丁寧に発音してくれるとも限りません。
つまり、実際のコミュニケーションでは、英語そのものに加えて、スピード、音の変化、話者の癖、周囲の雑音なども含めて聞き取る必要があります。
この教材のおもしろいところは、そうした「現地で英語を聞く環境」まで含めて練習できるところです。
かなり「いやらしい」リスニング教材
私が実際にこの教材をやってみて感じたのは、かなり「いやらしい」教材だということです。
もちろん、いい意味でです。
収録されているのは、静かな環境でクリアに録音された英語だけではありません。
風の音や道路の音など、周囲の雑音が入っている音声もあります。
最初は、
「こんなに雑音を入れなくても……」
と思うかもしれません。
でも考えてみると、海外で実際に英語を聞く環境はこちらのほうが自然です。
英語だけがきれいに聞こえてくる環境は、現実にはそれほど多くありません。
「静かな教材なら聞ける」から、「実際の環境でも聞ける」へ。
その橋渡しとして使えるのが、この教材の大きな特徴だと思います。
ニューヨーク、ロサンゼルス、東京。いろいろな英語を聞ける
収録されている音声のセレクションも特徴的です。
ニューヨーク編、ロサンゼルス編、東京編などがあり、さまざまな場所で話される英語を聞くことができます。
同じ英語でも、話す人によって発音やリズム、話し方の癖は違います。
特にニューヨークとロサンゼルスの音声を聞き比べると、その違いを感じる場面もあります。
そのため、これから海外旅行や留学、出張を予定している方は、自分が行く場所に近い音声を重点的に聞いてみるのもおすすめです。
「英語」というひとつの音を覚えるのではなく、いろいろな人が話す英語に対応できる耳をつくる練習になります。
問題は「聞こえた英語を埋める」形式
教材では、英文の一部が空欄になっていて、音声を聞きながら聞こえた英語を埋めていきます。
ひとつの会話の中に、空欄が複数ある問題もあります。
答えを確認するだけなら、一般的な穴埋めリスニング教材とそれほど変わらないかもしれません。
この教材で特に注目したいのは、そのあとの解説です。
単に、
「正解はこの単語でした」
で終わるのではなく、実際の会話の中で、その英語がどのような音になっていたのかまで確認できます。
ここが、この教材を使ううえでとても大切なポイントです。
「速い英語」だけど、本当に速すぎる?
タイトルには「速い英語」とあります。
ただ、私が実際に聞いた印象では、多くの音声は「ネイティブが異常な速さで話している」という感じではありません。
むしろ、
「英語圏では、普通にこれくらいのスピードで話しているよね」
というものが多いです。
難しく感じる理由は、単純なスピードだけではありません。
話者によってアクセントが違ったり、独特な話し方の癖があったり、音が大きく変化していたりします。
中には、英語にかなり慣れている人でも、
「これは難しい」
と感じるような音声もあります。
そのため、聞き取れない問題があっても、すぐに「自分はリスニングが苦手だ」と考える必要はありません。
大切なのは、なぜ聞き取れなかったのかを確認することです。
「速く聞こえる理由」が分かる
実際の会話では、英単語が辞書に載っている発音のまま、一語ずつ独立して聞こえてくるわけではありません。
音が落ちたり、弱くなったり、隣の単語とつながったりします。
例えば、Hの音が弱くなったり、TやDがはっきり聞こえなくなったりすることがあります。
good questionも、
good / question
と、二つの単語を完全に切り離して発音するとは限りません。
そのため、
「単語は全部知っているのに、なぜ聞き取れなかったんだろう?」
ということが起こります。
この教材では、こうした実際の発音についても解説されています。
つまり、ただ速い英語を大量に聞くのではなく、「なぜ速く聞こえるのか」「自分が想像していた音と何が違ったのか」まで確認できるのがポイントです。
英語は「書いてある通り」には聞こえない
これは日本語で考えると分かりやすいかもしれません。
例えば、お店で聞く、
「いらっしゃいませ」
という言葉。
文字では「いらっしゃいませ」と書きますが、実際のお店では、一音ずつ、
「い・ら・っ・しゃ・い・ま・せ」
とはっきり発音している人は、ほとんどいません。
実際には、
「しゃーせー」
のように聞こえることもあります。
文字だけを見ると、「いらっしゃいませ」と「しゃーせー」はかなり違います。
それでも日本語話者なら、お店に入ったときに「しゃーせー」と聞こえても、自然に「いらっしゃいませ」と言っているのだと理解できます。
英語でも、これと同じようなことが起こります。
文字では知っている表現でも、実際の会話では音が落ちたり、つながったり、弱くなったりして、スペルから想像していた音とはかなり違って聞こえることがあります。
だから、答えを見て、
「いや、何回聞いてもそう言っているようには聞こえない」
と思うことがあっても不思議ではありません。
リスニング力を上げるには、文字から想像した発音だけではなく、実際にはどのような音として聞こえてくるのかを少しずつ蓄積していくことが大切です。
何回聞いても聞こえないときは、一度離れてみる
この教材を使っていると、
「何回聞いても、答えに書いてあるようには聞こえない」
という音声に出会うことがあります。
そんなときは、同じ音声を延々と聞き続けなくても大丈夫です。
一度、その問題から離れてみてください。
答えのスペルを見ながら何度も聞いていると、今度は文字に引っ張られて、
「ここにこう書いてあるから、こう聞こえるはず」
と無理に音を探すようになることがあります。
そんなときは、別の問題へ進んで、数日後にもう一度戻ってみるのがおすすめです。
すると、
「あ、今なら聞こえる」
ということがあります。
一度で無理に聞き取ろうとするより、時間をあけて何度か触れることで、少しずつ新しい音のパターンに慣れていきます。
おすすめは1日5問
この教材には500問収録されています。
そのため、「500問全部やろう」と考えると、かなり大変に感じるかもしれません。
私のおすすめは、1日5問くらいです。
まず5問を聞いて問題を解きます。
そのあと答えを確認して、
なぜ聞き取れなかったのか
実際にはどんな音になっていたのか
を確認します。
そして、聞き取れなかったものだけ、もう一度聞いてみてください。
1日5問なら、500問で約100日です。
留学や海外出張、海外旅行を控えている方なら、出発までのリスニングトレーニングとして少しずつ進めるのもおすすめです。
500問すべてを何周もしなくていい
英語教材は「何周すればいいですか?」と聞かれることがあります。
この教材については、500問すべてを2周、3周する必要はないと思います。
一周目で、
すぐに聞き取れた問題
と
聞き取れなかった問題
を分けてみてください。
二周目以降は、聞き取れなかった問題を中心に復習します。
また、海外へ行く予定がある場合は、自分がこれから行く地域に関連する音声を重点的に聞くのもいいでしょう。
最初はまったく聞こえなかった音声が、
「あ、本当にこう言ってる!」
と自然に聞こえるようになったら、かなりいいトレーニングになっています。
全部を均等に繰り返すより、自分が聞き取れなかった音に時間を使う。
500問というボリュームのある教材だからこそ、この使い方がおすすめです。
こんな人におすすめ
特におすすめしたいのは、
TOEICやIELTS、TOEFL、英検などのリスニングはある程度できる。
でも、
実際のネイティブの会話になると、急に聞き取れなくなる。
という方です。
また、
「これから留学する」
「海外出張がある」
「海外旅行の前に実際の英語に耳を慣らしたい」
という方にも使いやすいと思います。
一方で、基本的な単語や文法そのものがまだ難しい場合は、まずはもう少し聞き取りやすい教材から始めてもいいでしょう。
この教材の目的は、基礎的な英語をゼロから学ぶことではなく、すでに知っている英語を、リアルな環境でも聞き取れるようにしていくことだと考えると分かりやすいです。
「教材の英語」から「現地の英語」への橋渡し
『ガチネイティブの速い英語リスニング500問』の一番おもしろいところは、単に「難しいリスニング問題が500問ある」ことではありません。
教材のクリアな英語にはある程度慣れてきた人が、次の段階として、
雑音がある
音がつながる
音が落ちる
話者によって話し方が違う
といった、実際のコミュニケーションに近い英語に触れられることです。
試験のリスニングができることと、海外でいろいろな人の英語を聞き取れることは、まったく別の能力ではありません。
ただ、その間には少しギャップがあります。
この教材は、そこを埋めるための練習として使いやすい一冊だと思います。
「試験で聞ける英語」から、「現地でも聞ける英語」へ。
次の段階のリスニングに進みたい方は、取り入れてみてください。
